バブル崩壊後にホテルの新業態として宿泊特化型エコノミー(バジェット)ホテルが出現した。ローコスト建設、ローコストオペレーションと高稼働率を武器に急伸している。
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❐宿泊特化型ホテル出現の背景
明治以宿泊特降の近代化の波に乗り欧米から輸入されたホテル業であるが、日本で独自の進化がなされた。
その代表が宿泊以外に宴会、婚礼、レストランその他サービスを提供するシティホテルである。
日本経済の飛躍的進展、企業の繁栄と共にホテルも成長を続けたのである。
しかし、そのような成長も日本経済の高度成長期の終焉、バブル崩壊によってほぼ終わりを告げたものといえる。
バブル崩壊後の日本経済は、デフレ、経済の低成長に苦しみ、企業及び個人にも余裕が失われた。
このような経済状態を反映してホテルの原点に立ち帰ろう、清潔、快適で低廉な料金で宿泊のみに業態を絞り込んで成功したのが宿泊特化型のエコノミー(バジェット)ホテルである。
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❐ 宿泊特化型ホテルの類型
宿泊特化型ホテルは、事業展開のターゲットをビジネスとするかレジャーとするかで分けることができよう。
両者は、立地、ホテルのハード部分や販売戦略が異なる。
ビジネスターゲットの成功例は、「東横イン」、「スーパーホテル」、「プレッソイン」、「ドミーイン」等のホテルである。
これらのホテルチェーンを展開しているのはホテル事業者でなく、異業種出身者であるところに特徴がある。
「東横イン」――設備工事業者
「スーパーホテル」――建設業
「プレッソイン」――電鉄
「ドーミーイン」――寮関係
レジャーターゲットの方は、日本では、まだポピュラーな存在でない。
しかし、欧米ではセグメントをはっきり分けて展開しているホテルチェーン(米国のスリープイン、欧州のノボテル等)があり、今後日本においても宿泊特化型レジャーターゲットホテルチェーンが出現することが予測される。
従来、日本の観光地をリードしてきた観光ホテルや旅館等が自己完結型の宿泊飲食機能を提供してきたのと異なり、地域の観光資源、観光業関連(飲食、温泉等)との連携により、顧客誘引力をいかにだしていくかが課題になるものと思料される。
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❐ 宿泊特化型ホテルの成立要件
宿泊特化型ホテルが成立するためには、ローコスト建設、ローコストオペレーション、と高稼働率が必要とされる。
宿泊特化型ホテルの所有・経営・運営形態は直営、マージナルコントラクト方式、リース方式やフランチャイズ方式等様々なものがあるが、いずれの形態でも、ホテル建設費等の初期投資の高低は、その後の事業展開に当たって、重要な要素となるものである。
初期投資が高いと、ローコストオペレーションと高稼働率を行ったとしても多額の償却負担を負う事業展開とならざるを得ない。
他方、ローコスト建築の実施により初期投資を軽減させることに成功すれば、事業成功の確率が高くなるものといえる。
次に、オペレーションであるが、宿泊特化型ホテルは、清潔で快適な宿泊環境を比較的低廉な料金で顧客に提供することをビジネスモデルとしている。
低料金を実現させるためには、ローコスト建築は勿論、日々のホテルオペレーションをローコスト化させる必要がある。
代表的なものとしては、ホテルソフトシステムの導入による省力化、作業の標準化、マニュアル化はもとより、自動精算機の導入等による徹底した機械化やモーニングサービスの外注化による徹底した省人化が行われている。
高稼働率については、食品スーパー等が低マージンを徹底した商品を高回転させることにより利益を上げるのと同様に、高稼働率により逸失利益の出現を防止させている。
駅前や駅至近の利便性の高い場所への出店やインターチェンジや幹線道路沿いの好立地に清潔、快適な施設をローコスト建設とローコストオペレーションにより実現させた低料金(絶対的な低料金でなく、相対的な低料金で価格競争力が充分あるわけである。)で提供することで価格競争力をもつことで実現させている。