宿泊特化型ホテルのタイプと事業モデル

バブル崩壊後にホテルの新業態として宿泊特化型エコノミー(バジェット)ホテルが出現した。ローコスト建設、ローコストオペレーションと高稼働率を武器に急伸している。

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宿泊特化型ホテル出現の背景 

明治以宿泊特降の近代化の波に乗り欧米から輸入されたホテル業であるが、日本で独自の進化がなされた。

その代表が宿泊以外に宴会、婚礼、レストランその他サービスを提供するシティホテルである。

日本経済の飛躍的進展、企業の繁栄と共にホテルも成長を続けたのである。

しかし、そのような成長も日本経済の高度成長期の終焉、バブル崩壊によってほぼ終わりを告げたものといえる。

バブル崩壊後の日本経済は、デフレ、経済の低成長に苦しみ、企業及び個人にも余裕が失われた。

このような経済状態を反映してホテルの原点に立ち帰ろう、清潔、快適で低廉な料金で宿泊のみに業態を絞り込んで成功したのが宿泊特化型のエコノミー(バジェット)ホテルである。

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宿泊特化型ホテルの類型 

宿泊特化型ホテルは、事業展開のターゲットをビジネスとするかレジャーとするかで分けることができよう。

両者は、立地、ホテルのハード部分や販売戦略が異なる。

ビジネスターゲットの成功例は、「東横イン」、「スーパーホテル」、「プレッソイン」、「ドミーイン」等のホテルである。

これらのホテルチェーンを展開しているのはホテル事業者でなく、異業種出身者であるところに特徴がある。

「東横イン」――設備工事業者

「スーパーホテル」――建設業

「プレッソイン」――電鉄

「ドーミーイン」――寮関係

レジャーターゲットの方は、日本では、まだポピュラーな存在でない。

しかし、欧米ではセグメントをはっきり分けて展開しているホテルチェーン(米国のスリープイン、欧州のノボテル等)があり、今後日本においても宿泊特化型レジャーターゲットホテルチェーンが出現することが予測される。

従来、日本の観光地をリードしてきた観光ホテルや旅館等が自己完結型の宿泊飲食機能を提供してきたのと異なり、地域の観光資源、観光業関連(飲食、温泉等)との連携により、顧客誘引力をいかにだしていくかが課題になるものと思料される。

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宿泊特化型ホテルの成立要件

宿泊特化型ホテルが成立するためには、ローコスト建設、ローコストオペレーション、と高稼働率が必要とされる。

宿泊特化型ホテルの所有・経営・運営形態は直営、マージナルコントラクト方式、リース方式やフランチャイズ方式等様々なものがあるが、いずれの形態でも、ホテル建設費等の初期投資の高低は、その後の事業展開に当たって、重要な要素となるものである。

初期投資が高いと、ローコストオペレーションと高稼働率を行ったとしても多額の償却負担を負う事業展開とならざるを得ない。

他方、ローコスト建築の実施により初期投資を軽減させることに成功すれば、事業成功の確率が高くなるものといえる。

次に、オペレーションであるが、宿泊特化型ホテルは、清潔で快適な宿泊環境を比較的低廉な料金で顧客に提供することをビジネスモデルとしている。

低料金を実現させるためには、ローコスト建築は勿論、日々のホテルオペレーションをローコスト化させる必要がある。

代表的なものとしては、ホテルソフトシステムの導入による省力化、作業の標準化、マニュアル化はもとより、自動精算機の導入等による徹底した機械化やモーニングサービスの外注化による徹底した省人化が行われている。

高稼働率については、食品スーパー等が低マージンを徹底した商品を高回転させることにより利益を上げるのと同様に、高稼働率により逸失利益の出現を防止させている。

駅前や駅至近の利便性の高い場所への出店やインターチェンジや幹線道路沿いの好立地に清潔、快適な施設をローコスト建設とローコストオペレーションにより実現させた低料金(絶対的な低料金でなく、相対的な低料金で価格競争力が充分あるわけである。)で提供することで価格競争力をもつことで実現させている。

一般の方へ

あなたの権利や財産としての不動産を守るために不動産鑑定評価が役立つ場合を例示すれば以下の例が挙げられます。

☆☆☆

1)相続のための遺産分割の参考のため

遺産分割では遺産の時価が分割額算定の基礎となります。

時価の把握が市場価格により容易な金融資産と異なり不動産は時価の把握が一般の方には困難です。

そのため相続人間で不公平感、不信感により紛争になることも多い傾向にあります。

こんな時、あなたの権利である遺産のうちの不動産の時価把握に当たり、あなたの権利や利益を守るために当社の不動産鑑定評価書が貢献することが出来ます。

☆☆☆

2)相続税算定のための価値把握

無道路地等の特殊な不動産の場合、利用効率が極端に劣ることがあります。

その時、あなたの遺産の不動産についてあなたの利益や権利を守る目的で、税額を低くする交渉を税務署とするために当社の不動産鑑定評価が貢献することが出来ます。

また、地価が一年で大きく下落したとき、路線価評価が一年に一度のため相続時の時価が路線価と大きく乖離する場合があります。その折に、あなたの権利である遺産のうちの不動産の時価を把握し、下落した時価を前提として税務署と交渉することであなたの権利・利益を守ることができます。そのために当社の不動産鑑定評価書が貢献することが出来ます。

☆☆☆

3)地代、家賃の算定

長期にわたる契約関係にある不動産賃貸借では、その間に経済情勢の変動が生じます。

そのため、現在締結されている地代、家賃が不動産の市場価値と大きく乖離してしまいことも珍しくはありません。

貸主にとっては「貸し損」、借主にとっては「借り得」が発生し当事者間で不公平が生じていることがあります。また、逆の場合もあります。

当事者間で不公平が生じ、当事者の納得が得られない場合、賃料の増額訴訟、逆に賃料の減額訴訟が発生する可能性が高まります。

そのような時、あなたの権利を守るために、客観的に地代や賃料を算定してあなたの主張が正しいことを証明するための証拠とするために、当社の不動産鑑定評価書が貢献することができます。

☆☆☆

4)借地権価格、一時金の算定

借地権売買、底地の所有権売買のみならず、借地権の譲渡承諾料、条件変更承諾料、や更新料等の一時金(以下、一時金という)について、借地権は個別性が強いことから定型的に求めることが難しい傾向にあります。

そのため、あなたの権利を守るために客観的に借地権価格のみならず一時金を算定することで、当社の不動産鑑定評価書が貢献することができます。

☆☆☆


❐ 当社連絡先

あなたが、不動産価格や地代・賃料の適正額の証明で悩んでいたら、今すぐ連絡を!

当社の連絡先は以下の通りです。

また、問い合わせフォームから連絡したい方は、こちらから今すぐお問い合わせを!

あかつき鑑定法人株式会社の連絡先

公益財団法人 日本不動産鑑定士協会連合会 会員

所在地: 〒400-0041  山梨県甲府市上石田4-6-24


連絡先: 055-228-5210 TEL(代表)


代表者:代表取締役 不動産鑑定士 森本武典


E-mail: sgogatu〇gmail.com  〇のカ所に@を入れて送信下さい。


問合せ:問い合せフォームのページはこちらをクリックしてください。


 

専門家の方へ

当社は独立した不動産鑑定会社として長年の実務経験と評価実績並びに学識経験を有しています。そのため様々な場面で各専門職業家の方々と協業を行なってきた経験があります。


法律専門家との協業

1)訴訟での不動産鑑定評価

2)民事再生、会社更生法による不動産鑑定評価

3)家賃、地代改定訴訟における鑑定評価

4)立退料、更新料等の算定のための不動産鑑定評価 等

☆☆☆

民事再生法、会社更生法による不動産鑑定評価で以下のa. b.に該当する場合、求める価格の種類は「特定価格」となります。

a.民事再生法に基づく評価目的の下で、早期売却を前提とした価格を求める場合

b.会社更生法又は民事再生法に基づく評価目的の下で、事業の継続を前提とした価格を求める場合

(理由)

a.の場合、財産を処分するものとしての価格を求めるもので、早期の処分可能性を考慮した適正な処分価格を求める必要があるため、通常の市場公開期間より短い期間で売却することを前提とするためです。

b.の場合、現状の事業を継続するものとして当該事業の拘束下にあることを前提として価格を求めるもので、必ずしも対象不動産の最有効使用を前提とするものでないことからです。


会計専門家との協業

1)減損会計での時価評価のための不動産鑑定評価 

2)賃貸不動産の時価評価のための不動産鑑定評価

3)資産除去債務の算定のため 等

☆☆☆

減損会計での不動産鑑定評価では、次の通り2つに分けて考えます。

a.減損損失の測定時における正味売却価額を算定する場合の時価を求める場合は、不動産鑑定評価上では「正常価格」を求めることとなります。

b.対象不動産の使用価値を求める場合は、不動産鑑定評価上では「特定価格」を求めることとなります。

b.の場合、現在の利用状況の継続を前提とするので、必ずしも最有効使用を前提としないこと、標準的な市場参加者を前提とするものでなく、現在の使用者の固有の事情を反映させるものであることから「特定価格」を求めることとなります。



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金融機関の方へ

金融融資の担保として様々なアセットが提供されることが予想されます。

☆☆☆

1)オフィスビル

地方都市のオフィス街は、企業の経費削減の影響を受けオフィスビルの空室が高止まりしているのは周知のとおりです。

また、グローバル化による企業の海外展開の影響もあり今後のオフィス需要の展開は読み辛い状況にあります。

そんな中で通り一遍の収益性評価では対象不動産の的確な価値判定が難しいのが実情です。

あなたの会社に、オフィスビル評価で、実務経験豊富で地方経済の情勢に通じた不動産鑑定士による当社の不動産鑑定評価書がお役に立ちます。

☆☆☆

2)レジデンス

地方の県庁所在地でもターミナル駅周辺に中高層のレジデンスが目立つようになってきました。

管理の良否、今後の修繕費の動向などは不動産鑑定士のみの知見では判断困難な部分があります。

その場合、あなたの会社に提携関係にある建築士によるエンジニアリングレポート(有償)を基に修繕費の動向等を鑑定評価額に反映した当社の不動産鑑定評価書がお役に立ちます。

☆☆☆

3)商業施設

地方都市では中心市街地の空洞化と共に郊外型SCが目立ち、競争の激化によるSC間の優勝劣敗が明確になってきました。

商業施設は単なる箱物としてのハードアセットではなく、企業活動による経営・運営によりその潜在能力が発揮されるオペレーショナルアセットとして把握されるものです。

あなたの会社に、商業施設の不動産価値を的確に把握するために実務経験豊富で地方経済の情勢に通じた不動産鑑定士による当社の不動産鑑定評価書がお役に立ちます。

☆☆☆

4)旅館・ホテル

旅館・ホテル等のオペレーショナルアセットは、単に不動産としてのハードアセットの知識のみならず、その業界の動向や専門的知見の習得なしにはその不動産を利用した経営体が生み出すキャッシュフロー予測を行なうことは困難なのが実情です。
このような性格の不動産価値を的確に把握するために、あなたの会社に事業活動から生み出された結果である財務分析に通じ、キャッシュフロー分析も可能な当社の不動産鑑定評価書がお役に立ちます。


 当社連絡先

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一般企業の方へ

一般企業の皆様への評価サービスとして、以下のものが考えられます。

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1)会計からの要請A  上場企業の減損会計のための不動産鑑定評価

あなたの会社が保有している不動産の市場価値が概ね50%以上減少している場合、一定の要件に当てはまる場合には減損損失を認識、測定する必要があります。

あなたの会社の減損対象が不動産の場合、当社の不動産鑑定評価書がお役に立ちます。

この場合、減損会計での不動産鑑定評価では、次の通り2つに分けて考えます。

a. 減損損失の測定時における正味売却価額を算定する場合の時価を求める場合は、不動産鑑定評価上では「正常価格」を求めることとなります。

b. 対象不動産の使用価値を求める場合は、不動産鑑定評価上では「特定価格」を求めることとなります。

(理由)

b. の場合、現在の利用状況の継続を前提とするので、必ずしも最有効使用を前提としないこと、標準的な市場参加者を前提とするものでなく、現在の使用者の固有の事情を反映させるものであることから「特定価格」を求めることとなります。

☆☆☆

2)会計からの要請B  上場企業の賃貸用不動産の時価評価のための不動産鑑定評価

あなたの会社が賃貸用不動産を保有している場合、その賃貸不動産の時価情報の開示が要請されます。

あなたの会社の賃貸用不動産の時価把握に、当社の不動産鑑定評価書がお役に立ちます。

☆☆☆

3)担保評価

あなたの会社が金融機関等からの借入に際して、不動産を金融機関に対して担保提供する時の参考として、あなたの会社の不動産の適正価格を評価することであなたの利益や権利を守るために当社の不動産鑑定評価書がお役に立ちます。

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4)売買の参考のための不動産鑑定評価

法人間、または法人と当該法人の役員との間、同族会社間の不動産売買等では、恣意性が入らない客観的な評価額での取引が必要となります。

恣意性がないと判断されないときは、場合によっては贈与税の負担が生じる場合が発生します。

あなたの会社の当該不動産取引価格について、恣意性がないと証明することで、あなたの会社の利益を守るために当社の不動産鑑定評価書がお役に立ちます。

☆☆☆

5)地代・賃料の額の妥当性の判定のための不動産鑑定評価

今お支払いの土地の対価である地代、建物の対価である賃料の額が不動産価値や市場に照らして適正かどうか経営判断に当たって難しい選択が必要になる場合もあります。

あなたの会社の地代、賃料の額の妥当性を判定し、場合によっては地代、賃料額改定交渉することであなたの会社の利益や権利を守るために、当社の不動産鑑定評価書がお役に立ちます。

地代や家賃の増減額請求の裁判に当たりあなたの主張の妥当性の拠り所として当社の不動産鑑定評価書があなたの会社にお役に立ちます。

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6)民事再生法、会社更生法による不動産鑑定評価

企業が民事再生法、会社更生法を適用する場合、早期売却を前提とした不動産価格や事業継続を前提とした不動産価格を求めることを要請される場合があります。

あなたの会社が民事再生や会社更生法による再生会社や厚生会社となり、不動産の早期売却や事業継続を前提とする価格を求める必要がある場合、当社の不動産鑑定評価書がお役に立ちます。

※この場合、民事再生法、会社更生法による不動産鑑定評価で以下のa. b.に該当する場合、求める価格の種類は「特定価格」となります。

a.民事再生法に基づく評価目的の下で、早期売却を前提とした価格を求める場合

b.会社更生法又は民事再生法に基づく評価目的の下で、事業の継続を前提とした価格を求める場合

(理由)

a.の場合、財産を処分するものとしての価格を求めるもので、早期の処分可能性を考慮した適正な処分価格を求める必要があるため、通常の市場公開期間より短い期間で売却することを前提とするためです。

b.の場合、現状の事業を継続するものとして当該事業の拘束下にあることを前提として価格を求めるもので、必ずしも対象不動産の最有効使用を前提とするものでないことからです。

☆☆☆


 当社連絡先

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PCBと不動産価格

❐ PCBが使用されている変圧器・コンデンサ

PCB入りの絶縁油を使用している変圧器やコンデンサは、昭和28年(1953年)頃から製造が開始されたが、昭和43年(1968年)に発生したカネミ油症事件を契機にPCB使用に係る規制が行われた。

 

PCB及びPCB廃棄物に関する主な規制は、以下のとおりである。

昭和47年(1972年)行政指導によるPCB及びPCB使用電気機器の製造禁止

昭和49年(1974年)化学物質の審査及び規制に関する法律により、PCBの製造、輸入及び使用等が禁止

昭和51年(1976年)電気事業法により、PCB使用電気機器を新規に施設することが禁止

平成13年(2001年)PCB特措法により、平成28年7月(2016年7月)までにPCBを保管している事業者は、処分義務が課された。

 

これらの規制のない時期に建築された工場、事務所ビル等ではPCBを使用した変圧器やコンデンサを使用・保管している可能性が高い。

 

❐ 他の専門家との協働 

複雑な現代社会において、不動産鑑定士のみの調査では鑑定評価が困難な場合が生じる。その場合、他の専門家による詳細調査が必要となり、特に証券化不動産にかかる鑑定評価においては、他の専門家の詳細な調査結果を鑑定評価に反映させることが要求されている。

一般の鑑定評価においても、不動産鑑定士が土壌や建築関係の専門家だとか弁護士や公認会計士等をはじめとする他の分野の専門家の調査結果を利用する機会が増加してきている。

 

❐ エンジニアリングレポートの活用 

エンジニアリングレポート(以下、ERという)とは、不動産に関する詳細調査(デュー・デリジェンス)のうち、以下の3つの詳細調査のうちの③の物的調査に関する報告書である。

 

①法的調査、

②経済的調査、

③物的調査

 

証券化対象不動産の鑑定評価においては、ERの結果を前提とすることが必要とされる。

ERは、公法上の規制・制約、修繕計画、再調達原価、有害な物質(PCB等)に係る建物環境、土壌汚染、地震リスク、耐震性、地下埋設物の有無等の専門性が高い個別的要因に関する専門家の調査結果をまとめたものである。

 

詳細調査におけるERとは、次の4つの報告書を指す。

イ.建物状況調査報告書

ロ.建物環境リスク評価報告書(フェーズⅠ)

ハ.土壌汚染リスク評価報告書(フェーズⅠ)

ニ.地震リスク評価報告書

 

不動産鑑定評価は、所定の手順を踏んで対象不動産の経済価値にアプローチするのだが、対象不動産の価格形成に影響を及ぼす要因の調査・分析においてERの内容と重なる部分が多く、両者は密接に関連する。

証券化不動産はもちろんであるが、一般の不動産取引においても、取引上の瑕疵発生回避の観点から、遵法性、修繕費、地震リスク、土壌汚染、アスベスト、PCB等の項目の全部または一部の調査を求める依頼が多くなっている。

 

❐ 不動産鑑定評価基準とPCB  

不動産鑑定評価基準において、PCBに関しては、不動産の価格に影響を及ぼす価格形成要因のうち、建物に関する個別的要因の一つとして、「有害な物質の使用の有無及びその状態」と、とらえている。また、留意事項において以下のように規定している。

 

不動産鑑定評価基準(留意事項)

2.建物に関する個別的要因について

(4)有害な物質の使用の有無及びその状態

 

建設資材としてのアスベストの使用の有無及び飛散防止等の措置の実施状態並びにポリ塩化ビフェニル(PCB)の使用状況及び保管状況に特に留意する必要がある。

PCB等の有害な物質の使用の有無により、処分費用等の要否が決まり、対象不動産の価格形成に影響を及ぼす可能性があるものである。

 

❐ PCB特措法 

PCB及びPCB含有廃棄物に関しては、「PCB特措法」がPCB及びPCB廃棄物を保管する事業者に以下のような義務を課している。

 

PCB廃棄物を保管する事業者は、主に以下の義務を負うことになる。

適正処理(法3)

都道府県知事への定期的な保管・処分状況の届出義務(法8、9、12、規則4)

平成28年7月(2016年)までの処分及び処分委託を行う義務(法10,14,16、令2)

何人も環境省令で定める場合のほか、PCB廃棄物を譲渡し、または譲受けてはならない(法11)。

 

この結果、PCBやPCB廃棄物を使用・保管する建物は、適正処理、届出義務並びに処分義務を負い、不動産の価格形成に影響を及ぼす可能性がある。

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PCBの特性とPCB特措法

人体に有害性の高いPCBは、カメニ油症事件を契機に製造・使用が禁止されたが、未だ処理が遅々として進行せず、市場には多数のPCBを含む変圧器・コンデンサ等が保管されている。2016年7月までに、PCB特措法ではPCBを保管している事業者に処分等を義務付けている。

 

❐ PCBの特性

PCBとは、ポリ塩化ビフェニルのことをいう。PCBは、電気絶縁性、不燃性に優れている。この特性に着目され、日本では昭和29年から国内でPCBが生産され、変圧器やコンデンサーなどの電気機器の絶縁物質として広く使用された。

 

❐ PCB中毒  

昭和43年(1968年)に、食用米ぬか油の製造工程で熱媒体として利用されていたPCBが、食用油に混入した。

PCBに汚染された食用油は、九州を中心に西日本一帯に出荷され、汚染された食用油を摂取した人の体に色素沈着、ニキビ様の発疹などの中毒症状が現れ、その毒性が社会問題化したのである。(カネミ油症事件)

PCBの毒性は、生体に対して高く、脂肪組織に蓄積し、発がん性、皮膚障害、内臓障害、ホルモン異常を引き起こすことが認められている。

 

❐ PCB製造・使用禁止の歴史 

カネミ油症事件をうけ、PCBの毒性が社会問題化した。その結果、昭和47年(1972年)に行政指導により、昭和49年(1974年)に化審法でPCBの製造・使用が禁止された。

しかし、PCBの処理は中々進まず、約30年にわたって使用が中止されたPCB使用の約39万台の高圧トランス、コンデンサ等が保管されている。その間に、行方不明や紛失は発生しているのが現状である。

 

❐ PCB特措法 

「残留有機物質に関するストックホルム条約(POPs条約)」が2001年に採択され、PCB、DDT、ダイオキシン等の残留性有機汚染物質の製造・使用の禁止、その他適正管理・処理等が決められた。これを受けて、日本でも「PCB特措法」が平成13年(2001年)に採択された。

 

❐ PCB特措法の概要

PCB特措法は、PCB、PCBを含む油またはPCBが塗布され、染み込み、付着し、若しくは封入された物が廃棄物となったものを「ポリ塩化ビフェニル廃棄物」という。(法2)

PCB廃棄物を保管する事業者は、主に以下の義務を負うことになる。

 

適正処理(法3)

都道府県知事への定期的な保管・処分状況の届出義務(法8、9、12、規則4)

平成28年7月(2016年)までの処分及び処分委託を行う義務(法10,14,16、令2)

何人も環境省令で定める場合のほか、PCB廃棄物を譲渡し、または譲受けてはならない(法11)。

 

PCB廃棄物の罰則はすべて両罰規定で、PCB廃棄物を譲渡し、譲受けた者は、直罰となっている。

PCB廃棄物の確実な処分を図るために、ポリ塩化廃棄物処理基金を設置し、日本環境安全事業株式会社による処理事業の操業がなされることになる。

 

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アスベストと不動産価格

❐ 他の専門家との協働の必要性

複雑な現代社会において、不動産鑑定士のみの調査では鑑定評価が困難な場合が生じる。

その場合、他の専門家による詳細調査が必要となり、特に証券化不動産にかかる鑑定評価においては、他の専門家の詳細な調査結果を鑑定評価に反映させることが要求されている。

一般の鑑定評価においても、不動産鑑定士が土壌や建築関係の専門家だとか弁護士や公認会計士等をはじめとする他の分野の専門家の調査結果を利用する機会が増加してきている。

 

❐ エンジニアリングレポート

エンジニアリングレポート(以下、ERという)は、不動産に関する詳細調査のうち、①法的調査、②経済的調査、③物的調査のうちの、③物的調査に関する報告書である。

証券化対象不動産の鑑定評価においては、ERの結果を前提とすることが必要とされる。

ERは、公法上の規制・制約、修繕計画、再調達原価、有害な物質(アスベスト等)に係る建物環境、土壌汚染、地震リスク、耐震性、地下埋設物の有無等の専門性が高い個別的要因に関する専門家の調査結果をまとめたものである。

 

詳細調査におけるERとは、次の4つの報告書を指す。

 

イ.建物状況調査報告書

ロ.建物環境リスク評価報告書(フェーズⅠ)

ハ.土壌汚染リスク評価報告書(フェーズⅠ)

ニ.地震リスク評価報告書

 

不動産鑑定評価は、所定の手順を踏んで対象不動産の経済価値にアプローチするのだが、対象不動産の価格形成に影響を及ぼす要因の調査・分析においてERの内容と重なる部分が多く、両者は密接に関連する。

証券化不動産はもちろんであるが、一般の不動産取引においても、取引上の瑕疵発生回避の観点から、遵法性、修繕費、地震リスク、土壌汚染、アスベスト、PCB等の項目の全部または一部の調査を求める依頼が多くなっている。

 

❐ アスベスト調査 

アスベスト調査は、上記のロ.建物環境リスク評価(フェーズⅠ)に含まれる。

調査には3つのレベルがあり、通常、証券化においては提供された資料の分析と現地調査レベル(目視レベル)、並びにヒアリングという手法で行う「フェーズⅠ」レベルの調査が行われる。

アスベストのうち、「アスベスト含有吹付け材」を主要な調査対象としている。「アスベスト含有成形材」は、破損等を原因とする飛散可能性がある場合にのみ問題があるものとして指摘される。

建材としてのアスベスト吹付け材が飛散可能性を有する状態にあることが「リスク」として、「問題あり」としてERで指摘されることになる。

ERでは、フェーズⅠ調査までであり、「問題あり」と指摘された場合、鑑定評価の依頼者に「ER作成者または専門業者に相談の上、フェーズⅡ調査を行う」旨、依頼することとなろう。

 

❐ 不動産鑑定評価基準における扱い 

不動産鑑定評価基準において、アスベストに関しては、不動産の価格に影響を及ぼす価格形成要因のうち、建物に関する個別的要因の一つとして、「有害な物質の使用の有無及びその状態」と、とらえている。また、留意事項において以下のように規定している。

 

不動産鑑定評価基準(留意事項)

2.建物に関する個別的要因について

(4)有害な物質の使用の有無及びその状態

 

建設資材としてのアスベストの使用の有無及び飛散防止等の措置の実施状態並びにポリ塩化ビフェニル(PCB)の使用状況及び保管状況に留意する必要がある。

アスベスト等の有害な物質の使用の有無により、対策工事等の要否が決まり、対象不動産の価格形成に大きな影響を及ぼす可能性があるものである。

アスベストは、廃棄物処理法、労働安全衛生法(石綿障害予防規則)、大気汚染防止法等の法規により、アスベストが使用された建物の解体、増改築、吹付けアスベストの損傷・劣化を原因とする工事等に際して、厳重な手順と処置を行うことが規定されている。

従って、吹付けアスベスト等が存在することが発覚した場合、以下のような要因に基づく減価が発生するものと考えられる。

 

①建物解体時における解体費用の増加

②吹付けアスベストの損傷・劣化部分の除去等の処置費用

③工事期間は建物を使用することができないことによる機会損失

④吹付けアスベスト等の使用によるイメージダウンが賃料を下落させる可能性

⑤吹付けアスベスト等を使用していることによる管理費用の増大

⑥心理的な嫌悪感により建物価格の減価

 

なお、アスベスト除去費用に関しては、国土交通省が平成17年8月と平成18年3月に発表しているので、国土交通省のホームページ等で確認してください。

 

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アスベストが含まれる建築資材

飛散性アスベストは、発じん量の多寡により3つの区分に分けられる。アスベストが使用されている建物は、構造により使用可能性並びに使用部位が判明する可能性がある。

 

❐ アスベスト建材の分類 

石綿障害予防規則区分(国土交通省「目で見るアスベスト建材」参照)によると、飛散性アスベストは、発じん量の多寡により3つのレベルに区分されている。

 

レベル1.吹付け材(著しく発じん量の多い製品)

レベル2.保温材等(比重が小さく発じんしやすい製品)

レベル3.その他石綿含有製品(発じん性の比較的低い製品)

 

❐ レベル1(吹付けアスベスト等) 

吹付け石綿、石綿含有吹付けロックウール、石綿含有パーライト吹付け、石綿含有バーミキュライト吹付けが該当し、著しく発じん量の多い製品と認定されている。 経年劣化により、石綿が飛散する恐れが高く、室内環境でも問題となる。

 

❐ レベル2(保温材等)

アスベスト含有保温材・断熱材・耐火被膜等で、通常は被覆されているので被覆部分に損傷等がなければ悲惨の恐れは低い。しかし、回収・解体時にはアスベスト繊維が飛散する恐れがある。

 

❐ レベル3(その他石綿含有建材) 

セメント等で固定化されたアスベスト含有の成形板等で、破砕しない限り飛散の恐れは低い。セメント製洋風瓦、窯業系サイディング、スレート版等で、主に一般住宅等に使用されてきたものである。

 

❐建物の構造によるアスベスト使用の可能性 

建物の構造により、アスベストの使用の可能性並びに使用部位の特定が可能といわれている。

 

【木 造】

吹付けアスベスト等が使用されている可能性は極めて低い。

 

【鉄骨造】

構造自体に耐火性がないため、耐火目的で耐火被覆としてアスベストが使用されている可能性が高い。

特に、昭和年代に建設された鉄骨造の建物の場合、アスベスト使用の可能性が高いことから、これらの建物の売買・改造・解体時にはアスベスト使用の有無を調査しないと、思わぬ損失や処置費用の負担を負う可能性がある。

 

 

【鉄筋コンクリート造・鉄骨鉄筋コンクリート造】

コンクリート事態が耐火性を有するため、耐火目的で耐火被覆として使用されている可能性は低いといわれている。 しかし、階段、駐車場、ボイラー室、体育館、講堂等の壁・天井に吸音材・断熱材として利用されている可能性がある。

 

国土交通省「目で見るアスベスト建材」は、こちらで閲覧できます。

http://www.mlit.go.jp/kisha/kisha06/01/010331_7_.html

 

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アスベストの危険性

❐ アスベストとは 

アスベストとは、天然の鉱物繊維で、繊維状ケイ酸塩基鉱物で、石綿とも呼ばれる。アスベストの代表例は、①白石綿(クリソスタイル)、②青石綿(クロシドライト)、③茶石綿(アモサイト)である。

 

❐ アスベストの危険性 

アスベストは、結晶化しており安定化な物質であるから、アスベスト材そのものには毒性はない。しかし、アスベスト材は、繊維状の物質で繊維が飛散する可能性が高い。

飛散したアスベスト繊維を人間が吸入すると、繊維が肺の中に残りアスベストの針状形状による物理的な刺激が健康被害を引き起こす。

具体的な健康被害は、肺がん、中皮腫、アスベスト肺(肺の慢性線維症)、石綿肺等である。 アスベスト繊維は、極めて細い繊維であるから大気中に浮遊・飛散しやすい。

飛散したアスベストを吸引することにより、様々な健康被害が発生するのである。

 

❐ アスベストの用途及び使用された期間   

アスベストは、鉱物であるため熱や音を遮断し、熱に強く、燃えず、高温でも変化せず、引っ張りに強く、摩擦や摩耗に強く、電気を通しにくく、薬品にも強いという特性がある。

このような不燃性、耐熱性、耐薬品性、絶縁性等の高さと値段の安さから、様々な用途に利用されていた。

特に、建築用途において利用される頻度が高く、昭和30年代頃から使用され始め高度成長期の波に乗ってビルの高層化、鉄骨造化の進展と併行して鉄骨造建築物等の軽量耐火被膜材として利用された。

特に、吹付けアスベストは、ビルの耐火材、耐熱材として昭和30年代から昭和50年(1975年)に原則禁止されるまで使用され続けた。

昭和50年に原則禁止されたアスベストであるが、アスベスト代替材として利用されたロックウールに5%程度のアスベストを混入しての使用(石綿含有吹付けロックウール)が平成元年(1989年)頃の業界による自主規制が行われるまで続いたのである。

※書籍によっては、石綿含有吹付ロックウールが昭和55年(1980年)までとしているものもあるが、国土交通省発表の「目で見るアスベスト建材」に基づき平成元年(1989年)までと判定した。

アスベスト材の製造時期については、国土交通省「目で見るアスベスト建材」を参照。

国土交通省「目で見るアスベスト建材」は、こちらで閲覧できます。

→ http://www.mlit.go.jp/kisha/kisha06/01/010331_7_.html

 

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